アサリ貝リゾチームの構造解析

 
 

 リゾチームは医薬品中にも使われている消炎酵素です。動物、植物、細菌さらにはファージと様々な種に存在しています。我々の研究室ではニワトリ卵白リゾチームを始め様々な種に存在するリゾチームについて調べてきました。中でも無脊椎動物に属するアサリ貝のリゾチームはアミノ酸配列が他のリゾチームと異なっており、新規のリゾチームであると考えられていました1)。

 1965年に世界で初めて酵素の立体構造としてニワト卵白リゾチームの立体構造がphillpsらによってX線結晶解析により解かれて2)以来様々なタイプのリゾチームの立体構造が解かれてきました。我々の研究室ではアサリ貝のリゾチームの立体構造を九大農学研究院の角田佳充先生らとの共同研究によって解き明かすことができました3)。

 無脊椎動物タイプであるアサリリゾチームは新規のリゾチームであると考えられていましたが、立体構造をよく見ると活性部位周辺の構造は他のタイプのリゾチームとよく似ていました。一方で得られた立体構造情報からアサリ貝リゾチームが糖-酵素の共有結合中間体を経由して基質を加水分解すること、また塩濃度、タンパク濃度、pHに依存した単量体-二量体間の四次構造変化により活性制御するという面白い分子機構を世界で初めて見いだしました3-5)。本研究の論文は後藤隆君の修士論文が基になっています。

青は活性触媒基を示す。二量体構造を取っている。

参考文献

1)Ito, Y., Yoshikawa, A., Hotani, T., Fukuda, S., Sugimura, K., and Imoto, T. (1999) Eur. J. Biochem. 259, 456-461

2)Blake, C. C., Koenig, D. F., Mair, G. A., North, A. C., Phillips, D. C., and Sarma, V. R. (1965) Nature 206, 757-761

3)Goto, T., Abe, Y., Kakuta, Y., Takeshita, K., Imoto, T., and Ueda, T. (2007) J. Biol. Chem. 282, 27459-27467

4)Goto, T., Abe, Y.,Imoto, T., and Ueda, T. (2010) Protein Pept. Lett. 17, 172-175

5)阿部 義人, 植田正,「アサリ貝リゾチームの構造と機能」(2009) 生化学 81, 314-319